今でも不思議。祖母との最後の想い出
17年前のことです。同じ敷地内に暮らしていた夫の祖母が亡くなりました。夫は早くに両親を亡くし、祖母が親代わりとなって夫とその兄弟を育ててくれたのです。
ですから祖母の夫への想いは普通の孫に対するそれよりも、強い物だったのでしょう。
強すぎる想いが空回りをして、お互いがギクシャクしてしまう様な関係のそばで私はただオロオロするばかりでした。
そんな時に祖母は亡くなり、初めて私は家族から葬式を出すことになりました。しかも現在ではあまり無いことと思いますが、自宅で全てを執り行ったのです。だから私も疲れていたのかも知れません。
葬儀も終わり後は火葬場まで行くのみとなった時に、座っている私の背中にそっと誰かが寄り添って来たのです。
まるで小さな子が甘えて寄りかかって来たようでした。自分の子がまだ3歳だったので、飽きて甘えて来たのかと思いました。笑わせてやろうとして、思い切りおかしい顔をして振り返りました。
そこには誰も居なかったのです。
私の子は部屋のすみで手伝いに来た実家の母に抱かれてちゃんと座っていました。母にどうしたの、と怪しまれました。それはそうです。
葬儀の席で変な顔をしている嫁、これは怪しい。誰かが背中にくっついて来たんだよ、と言い訳したのですが、
私の後ろには誰も居なかったそうです。気配だけじゃない、重さまで感じたのです。狐につままれたような気持ちでした。後から夫に言ってみました。
「ばあちゃんが、お別れに来たのかな。」
「なんで俺の所に来ないでお前の所だけにくるんだよ。」少し夫はイラっとしていたみたいでした。
それもそうですが、祖母からの最後のお別れだったと思うのは私の勝手です。だから、これは不思議だけれど心の温まる私のとっておきの体験なのです。そういう事にしておいて下さい。